【気質(情動制御性に着目して)】
気質は、生まれつきの生理的な基盤です。先天性のものです。養育者の子育てに影響を与えると考えられたため、研究されてきました。
性格とは違います。性格は、それも含めて、環境の影響を受けながら後天的に形成されていくものです。
中でも、情動制御性における気質についてです。
特に3つあります。
①行動抑制傾向(初めての人や物に物おじする特性)
②接近快活性(初めての人や物に、喜んで接近しようとする特性)
③エフォートフル・コントロール(情動を自分で制御する力)
特に③エフォートフル・コントロールについてです。
小中学校では、「癇癪を起こすから、発達障害」という見方がどこか一般的?な気がしますが、本当にそうでしょうか。
確かに発達障害は先天性のものではありますが、自閉症の診断には「癇癪を起こすかどうか」が規準にはなっていません。ADHDも「衝動性」はありますが、「癇癪を起こすかどうか」というわけではありません。
最近、「荒れているし、発達障害や知的な遅れもなさそうだから愛着(アタッチメント)障害では?」というような見方も感じますが、少し飛躍しすぎな気もしております。愛着(アタッチメント)障害は後天性だということもあり、”気質”としての”エフォートフル・コントロール”とはまた別物です。
生まれつき、環境によるものではなくて、生理的な基盤として、情動を自分で制御する力が低い子もいます。ここと愛着(アタッチメント)障害とを混ぜて話をすると、少しややこしくなります(もちろん、マーブルのように、掛け合わせている場合もあるとは思います)。
エフォートフル・コントロールが低いと、自分の情動を制御することが難しい傾向にあります。柔軟に思考を転換していくことが容易ではなく、感情のままに行動できない場面や状況の変化に応じて行動を変更していくことが求められている場面では、かなりの負担を強いられます。
結果として支援者から「ワガママばかり言わない」「周りを見て行動しなさい」等と厳しく言われることが増え、支援者が強く物事を強いる傾向になりがちです。
でも、エフォートフル・コントロールも、少しずつ発達していきます。
そのために支援者は、上記のような統制的な関わりよりも、応答的な関わりが有効と言われています。
つまり、子どもの思いやペースを尊重して温かく寄り添い、大いにほめて励ますことが大事になってきます。何より彼らが「安心感を得る」ことが大事になってきます。
自己有用感を得られて、自己理解ができるようになるまで少し時間がかかると思われるので、それまで待つ姿勢が大事になるのではないでしょうか。
また、エフォートフル・コントロールの発達は、脳の前頭前野が関係しています。
ですので、発達支援的な観点からは、集中力が要求されるような遊びやゲームを通して、あるいは記憶力が要求されるような童謡の暗唱等を通して、これらの神経ネットワークの発達が促進されていくという報告があります。
ちょっとした隙間時間に、好きな物に没頭できる時間を作ってみるのもいいかもしれませんね。
目の前の子どもたちの「なぜ?」「どうして?」を解決するヒントになれば嬉しいです。
↓↓ 参考になりそうな論文です ↓↓