ゆうきのブログ

個人のメモ用の、少し堅めの内容のブログです。

学級経営研究における問題行動のとらえ方の歴史的変遷

【学級経営研究における問題行動のとらえ方の歴史的変遷】

またまた面白い論文を見つけました。

「問題行動」は、どのようにとらえられてきたか。

それを昔から今へ、その変遷を追っていきます。

現在の時代や社会背景における学級経営を探るといったものに繋がると思い、読んでみました。

 

「学級経営(Calssroom Management)」という用語を初めて使用した著作を出版したのは、Bagle(1907)と言われています。

彼は学級経営の目標を「教室の秩序の維持と、それによる授業の効率化」と設定しました(1907)。またその目標達成のために、教師が授業の学習規律を設定し、子どもたちの行動が手続き化、ルーティーン化される必要があるとしました。そうすることで授業が効率的に進む。一方で、学習規律から逸脱する行動は「問題行動」とみなされるようになりました。問題行動が教室内で生起することにより、教師が教えることに専念できる時間が40%程減るという報告もあるようです(Karweit,1989)。

このような目標で学級経営が行われたため、「授業中に3回私語をすると叱責される」というようなルールが横行することに繋がったようです。問題行動の要因が”個人の中にある”とされていました。

1960年代までのこのような学級経営は、行動主義心理学の影響が大きいようです。「問題行動を、とにかく生起させない」ことに焦点が当てられました。ただし、この時代の行動主義心理学は、今のABAというよりは、ワトソンの時代の行動主義心理学が近いと思われます。

1970年代に認知理論が導入され、子どもの内面等のいわば「行動の背景」に焦点が当てられ始めました。心理学の様々な知見が学級経営に応用されていったのもこの時期です。教師期待効果(ピグマリオン効果)、モデリング理論(バンデューラの)等も提唱され始めました。教師と子どもの関わりも、良好な関係構築の重要性も指摘され、問題行動を生起させないことよりも、適切な行動を習得させることを目指す学級経営の研究が盛んになりました。教師と子どもの関係構築に関しては、アドラー心理学を活用する研究も進みました。

1980年代に入ると、学級の雰囲気の重要性が研究されるようになりました。その結果、問題行動を起こす子ども本人ではなく、まわりの子どもへの対処も必要であるという

指摘がされ始めました。つまり、問題行動は、まわりの仲間との関係による影響を強く受ける、ということです。

1990年代に入ると1980年代の知見がいかされ、問題行動がまわりの子どもや学級集団成長の契機になっていることが指摘されるようになってきました。問題行動は、学習活動の多様化を担保するもの、という考え方が出てきました。以前の「手続き化により学習規律を作り、学習活動を効率化するもの」という学級経営から大きく転換してきたのがこの時期です。

現在は、教師ー子ども関係や仲間関係のベクトルと、教室内の相互行為をどう作っていくかというベクトルと、2つの方向の分析が必要とされているようです。

 

ここからは考察です。

このようにして変遷を見ると、それぞれの担任の考え方やり方が、いつ頃の学級経営の考え方なのか、ということがわかってくると思います。もちろん、結果オーライですし、やり方はいろいろあってしかるべきやと思います。

あと、学級経営に様々な心理学が転用されているので、基礎的な技能として、そこは抑えておきたいところ。中でもモデリング理論は、結構興味あります。ただ、自分が今やっていることって、ホントにまだまだこういった”基礎的な技能”なんだなあということが実感しますね。

もっともっと大きな枠で、学級経営をとらえれるようになりたいなと、そんな風に思いました。

 

https://drive.google.com/file/d/1vhssNtw1X9yHoT_YEKJ58EKlrcq1vgdM/view?usp=sharing